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貴金属地金の基礎知識

シルバー価格が上がる理由とは?銀の需要と供給から今後の相場を予測

2025.12.12 シルバー

シルバー価格は近年大きく変動しており、投資家や業界関係者から注目を集めています。この記事では、銀の価格がなぜ上昇しているのか、その背景にある需要と供給の構造を徹底的に解説します。

グリーンエネルギー革命や半導体需要の拡大といった具体的な上昇要因、過去10年間の価格推移、そして2025年以降の相場予測まで、シルバー価格を理解するために必要な情報を網羅的にお届けします。銀への投資を検討している方、製造業で銀を使用する企業の方、あるいは貴金属市場全般に興味がある方にとって、今後の価格動向を見極めるための重要な判断材料となる内容です。

工業用需要が全体の約5割を占める銀の特性、主要産出国であるメキシコ・ペルー・中国の生産状況、さらにFRBの金融政策が価格に与える影響まで、多角的な視点から分析します。この記事を読むことで、シルバー価格の変動メカニズムと今後の見通しを正確に把握できるようになります。

シルバー価格とは何か基礎知識を解説

シルバー価格とは、銀という貴金属の市場における取引価格のことを指します。銀は金やプラチナと並ぶ代表的な貴金属であり、宝飾品や工業製品、投資商品として世界中で取引されています。銀は主に宝石、硬貨そして他の産業でも使用されている金属化学元素であり、その価格は日々変動する相場商品です。

銀・シルバーの価格は、金のように世界情勢や需要の高さを受けて、日々変動しています。国際市場では主にドル建てで取引され、日本国内では円建てで価格が表示されるため、為替レートの影響も受けます。投資家や製造業者にとって、銀価格の動向を理解することは重要な判断材料となっています。

銀の取引単位と価格の見方

国際的な銀取引では、トロイオンスという単位が標準的に使用されています。トロイオンスは貴金属取引で用いられる特殊な重量単位で、1トロイオンスは約31.1035グラムに相当します。ニューヨーク商品取引所やロンドン金属取引所などの国際市場では、この単位で価格が形成されています。

一方、日本国内では1グラムあたりの価格で表示されることが一般的です。税込小売価格、税込買取価格は、1gあたりの価格として提示され、消費者にとって分かりやすい形式となっています。また、銀の市場地金価格は、営業日の午前9時30分に更新されます。

取引単位重量換算主な使用地域
トロイオンス約31.1035グラム国際市場
グラム1グラム日本国内

国内と海外のシルバー価格の違い

シルバー価格は、国内価格と海外価格で異なる表示方法と影響要因があります。海外市場では主にドル建てで取引されるため、国際的な需給バランスや米国の金融政策が価格に直接反映されます。一方、日本国内の銀価格は、海外のドル建て価格に為替レートを掛け合わせて算出されます。

このため、たとえ国際市場での銀価格が横ばいであっても、円安ドル高が進めば日本国内での円建て価格は上昇します。逆に円高ドル安になれば、国内価格は下落する傾向にあります。海外相場や為替相場に大きな変動があった場合は、同日内に価格を変更することがあります。

また、国内の貴金属業者では小売価格と買取価格の両方が設定されており、その差額がスプレッドとなります。小売価格には加工費や流通コスト、消費税が含まれるため、国際市場価格よりも高めに設定されるのが一般的です。

過去10年間のシルバー価格推移を振り返る

過去10年間の銀価格相場の推移を見ると、上昇傾向が継続していることがわかります。2015年以降、シルバー価格は様々な経済要因や世界情勢の影響を受けながら変動してきました。1990年バブル当時、1g当たりの平均相場が26円となっていましたが、2022年の平均相場は94円となっています。この長期的な価格上昇は、工業需要の拡大や投資需要の高まりによるものです。

シルバー価格は金価格と連動する傾向がありながらも、工業用途での需要が価格変動に大きな影響を与える特徴があります。過去10年間では、太陽光パネルや電子機器への利用拡大が価格を押し上げる要因となってきました。

リーマンショック後の急騰と調整

リーマンショック後の2010年代初頭、シルバー価格は大きな変動を経験しました。金融緩和政策による投資マネーの流入や実物資産への需要増加により、銀価格は急騰しました。しかし、その後は調整局面に入り、2015年前後までは軟調な値動きが続きました。

2015年から2019年にかけては、価格は比較的安定した推移を示し、1グラムあたり60円から80円程度のレンジで推移していました。この時期は世界経済の安定と工業需要の緩やかな成長が価格を支える形となりました。

コロナ禍での価格変動

2020年に入ると、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、シルバー価格は大きな変動を見せました。パンデミック初期には一時的な下落を経験したものの、各国の大規模な金融緩和政策とグリーンエネルギー関連の需要期待により、2020年後半から2021年にかけて価格は急上昇しました。

2023年の銀価格は、一時の下落からの回復、そして持続的な上昇傾向を続けています。コロナ禍以降、世界的なインフレ懸念や実物資産への投資需要の高まり、さらには太陽光発電などの再生可能エネルギー分野での需要増加が価格を押し上げる要因となっています。2025年には史上最高値を更新する動きも見られ、今後の価格動向に注目が集まっています。

シルバー価格が上がる5つの理由

近年、銀の需要と価格は急速に高まっており、再生可能エネルギーやテクノロジー分野における工業需要の拡大、そして世界的な経済不安定を背景に、安全資産としての魅力が再評価されています。ここでは、シルバー価格が上昇傾向にある5つの主要な理由について詳しく解説します。

グリーンエネルギー革命による需要増

グリーンエネルギー政策に関連するプロジェクトが進展し、太陽光発電パネルや電池の生産需要が増加しており、産業用途としての銀の需要が注目を集めています。太陽光パネルの導電材として銀は不可欠な素材であり、世界各国がカーボンニュートラル目標を掲げる中、再生可能エネルギーへの投資が拡大しています。電気自動車のバッテリーや充電インフラにも銀が使用されるため、今後も需要増加が見込まれます。

半導体・電子部品への利用拡大

銀は電気伝導性に優れた金属であり、半導体や電子部品の製造に欠かせません。スマートフォン、タブレット、IoT機器の普及により、電子機器に使用される銀の量は年々増加しています。デジタル化とDX推進により、電子部品需要は継続的に拡大する見通しで、工業用銀需要を押し上げる要因となっています。

世界的なインフレ懸念

世界的なインフレ傾向は実物資産である銀への投資ニーズを高める傾向があり、中央銀行の金利引き下げが再び始まれば実物資産の魅力はさらに増し、銀への資金流入が加速する可能性があります。各国の金融緩和政策や通貨供給量の増加により、インフレヘッジとしての銀の価値が見直され、投資資産としての需要が高まっています。

金銀比価の是正期待

金銀比価は80以上となる場面も多く、歴史的な平均値である約60から70から見ると、銀はまだ過小評価されていると考えられ、割安な今の価格帯は投資チャンスと捉えることもできます。金価格の高騰に対して銀価格の上昇が遅れており、この比率が是正される動きが期待されています。歴史的に見て金銀比価が高水準にある時期の後には、銀価格が急騰するケースが多く見られます。

投機マネーの流入

金価格が過去最高値を更新する中、銀にも注目が集まり、2024年には約12年半ぶりの高値を記録し、投資対象としての魅力が再認識され、現物・ETF・先物取引を通じて需要が増加しました。金に比べて価格が手頃であることから個人投資家の参入が増え、投資用コインや銀地金への需要が拡大しています。市場規模が金よりも小さいため、投機的な資金流入による価格変動が大きくなりやすい特徴があります。

銀の需要構造を詳しく分析

銀の需要は他の貴金属と比較して独自の構造を持っており、需要全体の約半分が工業用途で占められている点が最大の特徴です。需要の約6割が工業用で、半導体などの電子材料分野をはじめ多岐にわたる用途があります。残りの需要は投資分野や宝飾品、銀器などに分かれており、金と比較すると工業用メタルとしての性質が強く表れています。

需要分野主な用途特徴
工業用太陽光発電、電子部品、半導体需要全体の約50~60%
投資用地金、コイン、ETF価格変動に左右されやすい
宝飾品アクセサリー、装飾品デザイン性と実用性を兼ねる
銀器食器、工芸品伝統的需要

工業用需要が占める割合

最大の需要は工業用需要で、そのうち近年最も伸びているのが太陽光発電分野です。銀は金属の中で最も高い電気伝導性と熱伝導性を持つため、電子機器や太陽光パネルなどのハイテク製品に不可欠な素材となっています。自動車一台には500個を超える銀の部品が使われており、接点などの精密部品に広く活用されています。

さらに太陽光パネルやEVといった脱炭素化に向けた分野での銀の工業需要が世界的に急増しています。この工業用需要の増加は、銀価格を力強く下支えする要因となっており、景気が良い局面では産業活動に不可欠な素材としての価値が高まります。

宝飾品・銀製品の需要

宝飾品と銀器の需要は、幅広い意味でのシルバーをそのままの形で使う「シルバー投資」と考えられます。銀の宝飾品は美しい輝きと加工性の高さから、世界中で人気があります。ただし宝飾品は職人技が必要なため、銀の価値よりも高い価格となり、純粋な投資対象としては適さない場合があります。

銀器や食器などの伝統的な銀製品も一定の需要を維持しており、特に富裕層や文化的価値を重視する層からの支持を集めています。これらの製品は実用性とともに資産価値を持つ実物資産として認識されています。

投資用コインや地金の人気

投資用の銀コインや地金は、金に比べて少額から投資できるため、投資初心者にも人気があります。代表的な投資用銀貨には、アメリカイーグル銀貨やカナダメイプルリーフ銀貨などがあり、各国政府が純度を保証しています。

投資分野の需要は、工業用需要の次に大きな割合を占めています。銀は金と同様にインフレヘッジとして機能し、通貨価値の下落に対する有効なリスク回避手段となります。また銀地金は保管場所で取引されることで付加価値税を回避できる仕組みもあり、効率的な投資が可能です。

銀の供給サイドの課題

銀の供給には大きく分けて鉱山からの一次生産とリサイクルによる二次供給がありますが、近年ではいくつかの構造的な課題が顕在化しています。ここでは供給サイドの現状と今後の展望について詳しく見ていきます。

主要産出国の生産状況

世界の銀生産量は、メキシコが第1位で6,289トン、中国が第2位で3,399トンとなっています。メキシコ・中国・ペルーの生産上位3か国合計で世界全体の年間銀生産量の約半分、上位10か国合計で世界全体の約83%を占める状況です。

銀の生産は地域的に集中しており、少数の国に依存する構造となっています。生産量はメキシコ、ペルー、中国、ポーランド、チリ、ボリビア、オーストラリアの順に多いとされており、これらの国の政治・経済状況や鉱山政策が世界の銀供給に大きな影響を与えています。

さらに重要なのは、銀の生産は、銀がメイン(primary)の鉱山で生産される量は全体の4分の1に過ぎず、残りの4分の3は、ほかのメタルの副産物として生産されている点です。最大のものは鉛亜鉛で31.7%、そしてプライマリー(銀鉱山)26.7%、銅25.3%、ゴールド15.7%という内訳となっており、銅や亜鉛などベースメタルの生産動向に左右されやすい構造となっています。

鉱山開発の停滞と埋蔵量

銀の埋蔵量については、2020年は112,864トンが確認されており、現在確認されている資源量は226,551トンであり、その約半分が経済的に掘削可能とされています。埋蔵量はペルー、ポーランド、オーストラリアの順となっている状況です。

新規鉱山の開発には長期間を要するため、需要急増に即座に対応できないという課題があります。鉱山開発には探査から生産開始まで通常5年から10年以上の期間が必要とされ、環境規制の強化や地域住民との合意形成など、開発のハードルは年々高まっています。

一方で、リサイクルからの供給は6103トンと供給全体の約19%を占めており、工業素材(3405トン)、宝飾品(1082トン)、銀器(839トン)、フィルム(662トン)、そしてコイン(112トン)が主なリサイクル源となっています。今後は二次供給の拡大も供給課題への対応策として注目されています。

シルバー価格の今後を左右する重要指標

シルバー価格の将来動向を予測する上で、複数の重要な経済指標を理解しておく必要があります。特に金融政策や為替市場、そして商品市場全体の流れが、銀の価格形成に大きな影響を及ぼします。

FRBの金融政策と為替動向

アメリカの中央銀行制度における最高意思決定機関であるFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策は、シルバー価格を大きく左右する最重要ファクターです。FRBが金融政策の意思決定のために開く会合がFOMC(連邦公開市場委員会)で、年8回実施され政策金利の利上げ・利下げの方針を決定します。

FRBが利上げを実施すると、ドルが強含む傾向があり、ドル建てで取引される銀価格は下落圧力を受けやすくなります。逆に利下げ局面では、ドル安が進行し、銀をはじめとする貴金属価格が上昇しやすい環境が整います。

為替相場も重要な要素です。日本国内でのシルバー価格は、国際市場での銀価格だけでなく、ドル円レートにも連動します。円高が進めば輸入価格が下がり国内価格も下落しやすく、円安では逆に国内価格が上昇する仕組みです。

金融政策の変化ドルへの影響シルバー価格への影響
FRBの利上げドル高下落圧力
FRBの利下げドル安上昇要因
日銀の利上げ円高国内価格下落

商品市況全体のトレンド

銀は工業用金属としての側面を持つため、原油や銅など他の商品市況との連動性が高い特徴があります。世界経済が拡大局面にあり製造業の活動が活発になると、銀の工業需要が増加し価格上昇を後押しします。

また、金価格との相関関係も見逃せません。金銀比価と呼ばれる金価格を銀価格で割った比率は、投資家が注目する指標の一つです。歴史的に金銀比価が高水準にある場合、銀が割安と判断され投資資金が流入するケースが見られます。

商品指数全体が上昇トレンドにある時期は、インフレヘッジとしての貴金属需要が高まり、銀価格にも追い風となります。世界的なインフレ懸念や地政学リスクの高まりは、安全資産としての銀への注目度を高める要因となるでしょう。

2025年以降のシルバー相場予測

2025年12月現在、銀価格は50ドル台半ばで推移するなど、史上最高値圏での値動きが続いています。この高値圏の背景には、工業需要の拡大とグリーンエネルギー革命による構造的な需要増加があり、今後の相場形成にも大きな影響を与える見通しです。

アナリストの中には「まだ上昇余地がある」と見る声もあり、金銀比価(ゴールド・シルバー・レシオ)が80以上となる場面も多く、歴史的な平均値(約60~70)から見ると、銀はまだ過小評価されていると考えられます。この指標から見ても、銀は割安な価格帯にあり投資機会として注目される状況が継続しています。

強気シナリオと弱気シナリオ

強気シナリオでは、1トロイオンス(約31.1g)あたり46~56ドル程度となる予測があり、2025年には1オンスあたり48ドルから50ドルに達し、2030年には80ドル以上になる可能性も示唆されています。この背景には、EV・再エネ需要の増加、ドルが弱くなったりインフレ懸念が強くなれば銀価格は上昇しやすく、金価格上昇との連動性で投資家の安全資産先行買いによる連れ高が想定されています。

一方で弱気シナリオとしては、関税導入によって悪化した世界的な景気後退への懸念の中で、工業需要の弱体化に対する懸念が価格下落要因となります。銀の市場規模は比較的小さいため、投機的な動きで乱高下しやすい特性もあり、短期的な価格変動リスクには注意が必要です。

まとめ

シルバー価格は、金と比較して産業用需要の比率が高く、経済活動や技術革新の影響を強く受ける特性があります。本記事で解説したように、現在のシルバー価格上昇の背景には、グリーンエネルギー革命による太陽光パネルでの需要増加、半導体・電子部品への利用拡大という構造的な需要増加要因が存在します。

さらに、世界的なインフレ懸念により安全資産としての魅力が高まっていること、金銀比価が歴史的に見て銀が割安な水準にあること、そして投機マネーの流入といった要因も価格を押し上げています。一方で、供給サイドでは主要産出国における鉱山開発の停滞や生産コストの上昇が課題となっており、需給バランスは銀価格の上昇を支える構造になっています。

今後のシルバー価格を予測する上では、FRBの金融政策や為替動向、商品市況全体のトレンドを注視する必要があります。2025年以降の相場については、強気シナリオでは脱炭素化の加速とインフレ継続により大幅な上昇が期待される一方、弱気シナリオでは景気減速による工業需要の減少が価格を抑制する可能性があります。

投資判断においては、こうした複数の要因を総合的に考慮し、中長期的な視点で銀市場を捉えることが重要です。シルバー価格は金と比べてボラティリティが高いため、リスク管理を徹底しながら、分散投資の一環として検討することをおすすめします。

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